十二月二十五日の街
きのうは床屋へ出かけたが、いつもより込んでいた。
平成二十一年十二月二十五日、あと少しで今年も終わる。
髪を切って、さっぱりした気持ちで新年を迎えたい、という客が多いのだろう。
順番を待っているあいだ、流行りの曲が流れていた。聴き入っていると、
「どうぞ」
と声がかかり、鏡の前へ電動車いすを進める。
「スポーツ刈りの、いちばん短いので…」
と伝えた。
運動神経の障害で、ぼくの言葉ははっきりしない。ふだんから慣れていないと聞き取りづらい。けれど、耳を傾けていた店員さんは、
「かしこまりました」
いつもよく利用するので、だいたいのことはわかってくれる。
QBHOUSE、という床屋さんで、料金が千円と安い。ザ・モール仙台長町の三階にある。ぼくのアパートから電動車いすで行けるところにあり、カットも十分ぐらいですむのもよい。
この日、ぼくの外出についてくれたヘルパーさんは、ほっそりしたルックスのよい、長い髪の娘さん(二十歳ぐらい)だった。午後の一時にアパートにみえ、明るい声で、
「尾崎さん、メリークリスマス!」
「あ、きょうは、クリスマスなんだ…」
あらためて思い出した。いつもは雑用に夢中だったりして、日が過ぎてから気づくことが多い。
はじめは二十三日に出かけようと思ったが、クリスマスイブの前日で、床屋さんは相当込むんじゃないかなぁと、ヘルパー派遣事業所の代表の方が心配してくださった。ぼくもそう思って、二十五日にしてもらった。
電動車いすの後を、ヘルパーさんについて来てもらいながら、十三、四分でショッピングモールへ着いた。
すると、いつものように、なんとなく甘いものがほしくなり、この日も床屋がすんでから、喫茶店へ寄った。
ぼくはアイスモカを頼んで、ホイップクリームをのせてもらった。それを口元へもってきてもらい、ストローですする。やさしい甘さがしみわたり、ほっとする。
ケーキも頼んで食べた。
介助しながら、ヘルパーさんが呟いた。
「この木も、なんかクリスマスツリーになってる」
「ほんとうだ」
白くて細い木があり、テーブルのまん中から天井まで届いている。金と銀のモールが枝にからんできらめいていた。
あちらにも、こちらにも、クリスマスツリーがあり、ぼくもいつのまにか子どもに返ったように、その雰囲気を楽しんでいた。
少しゆっくりしてから、喫茶店を出た。
外は日が傾き、もう少しであたりは暗くなりはじめる。
アパートへ戻って片付けが済んだ。ヘルパーさんは笑みを浮かべ、
「それでは尾崎さん、風邪ひかないように暖まっててくださいね」
「はい、ありがとうございます」
ぼくもにっこりして、おじぎした。
ヘルパーさんが帰ったあとも、部屋でお気に入りの曲を流し、少しのあいだクリスマスの街の雰囲気をふり返りながら、ゆっくり過ごした…。
| 固定リンク
| コメント (1)
| トラックバック (0)
|





最近のコメント